いちごのライフサイクル:多年草としての特性と1年間の育て方

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いちごのライフサイクル:多年草としての特性と1年間の育て方

今回はいちごを栽培するにあたって知っておきたい基礎知識として、「いちごのライフサイクル」について簡単に整理をしたいと思います。

いちごは多年草?ライフサイクルと基本情報

いちごは多年草、何年も栽培できる?

いちごは、開花・結実しても枯れずに数年にわたって生育する多年草です 。そのため、理論上は同じ株を何年も続けて栽培することが可能です 。

しかし、アブラムシが媒介するウイルス病に複数感染することで収穫量が減る可能性が高まるため、毎年新しい苗を植え直すことが推奨されています 。

いちごはランナー(ほふく枝、走出枝)で栄養繁殖するため、子苗を採取することで翌シーズン用の苗を準備できます 。

いちごの生育環境と適した気候

いちごは、生育適温が17〜20℃と冷涼な気候を好む植物です 。暑さにはやや弱い傾向がありますが、寒さには強く、雪の下でも冬越しが可能です 。

世界の温帯から亜寒帯で広く生産されており、熱帯地域では標高1000m以上の高地でなければ育ちにくいとされています 。

一季なり品種と四季なり品種の違いと特徴

いちごの品種は、大きく分けて「一季なり品種」「四季なり品種」の2種類があります 。

一季なり品種は、春に花を咲かせ、初夏まで収穫が可能です 。

一方、四季なり品種は、多くの場合、春と秋の2回にわたって花を咲かせ、収穫ができます 。四季なり品種は夏の暑さに強く、25〜30℃の気温でも花芽を形成できるという特徴があります 。

以前は、四季なり品種は一季なり品種に比べて粒が小さく、酸味が強いとされていましたが、近年の品種改良により、一季なり品種に劣らない品質のものが増えてきています 。1年に2シーズン収穫できる点が四季なり品種の魅力です。

いちごの「休眠」とは?品種による休眠の深さ

いちごは、気温が5℃以下になると休眠状態に入ります 。これは冬の寒さを乗り切るための生理現象です 。

休眠の深さは品種によって大きく異なり、深い休眠を必要とする品種では1000時間以上の低温に当たる必要がある一方、休眠の浅い品種は約100時間程度の低温で目覚めます 。促成栽培(ハウスなどを利用して旬ではない時期に収穫を早める栽培方法)に適した「女峰」「とちおとめ」「章姫」「さちのか」などは、いずれも休眠が浅い品種として知られています。

いちごの1年間の育て方:露地栽培のライフサイクル

植え付けの時期と苗の選び方(10月~11月)

露地栽培におけるいちごの植え付けは、一般的に10月から11月頃が適期です 。この時期には、本葉が4〜5枚に育った苗を植え付けます 。

花芽分化のサインと休眠の準備(11月~2月)

11月頃になると、気温が25℃以下になり日が短くなる「低温短日」という条件に反応して、いちごの株の中で目には見えない花芽が作られ始めます 。

さらに低温短日が続くと、いちごは冬の寒さを乗り越えるために休眠状態に入ります 。この時期、葉は小さくなり、地面に張り付くようなロゼット状の形になります 。休眠している間、地下では根がしっかりと張り、春からの成長に備えて糖やデンプンを蓄えます 。

休眠からの目覚めと新芽の成長(3月)

3月頃になると、一定期間5℃以下の低温に当たったいちごの株は休眠から目覚めます 。株の中心部分であるクラウンから新しい芽が出始めるのが、休眠が覚めたサインです 。

この時期には春苗が出回るため、新しい苗を植え付けることも可能です 。

蕾の形成と開花の準備(3月~4月)

休眠から目覚めた3月から4月にかけて、目に見える形でいちごの蕾が形成されます 。これは、間もなく花が咲く準備が整ったことを示します。

開花とランナーの発生(4月~5月)

4月から5月にかけて、いちごの花が次々と咲き始めます 。

同時に、次世代の苗を残すためのランナー(ほふく枝、走出枝)が出始めます 。

実がなる時期と収穫のタイミング(5月~6月)

5月から6月にかけて、いちごの実に甘みがつき、収穫の時期を迎えます 。品種にもよりますが、開花から約35〜40日で完熟したイチゴを収穫できます 。

この期間中も、ランナーは次々に出続け、新たな子苗の成長に繋がります 。

ランナーに子苗ができる時期と育苗(6月~7月)

気温が25℃以上になると、いちごは花芽をつけなくなり、収穫期が終了します 。

この時期、伸びたランナーの先端には子苗が形成されるようになります 。これらの子苗を次世代の親株として利用する場合は、育苗(苗を育てること)を行います 。

収穫後のいちごはどうする?一季なり品種と四季なり品種の管理

一季なり品種の収穫後の株の扱いと翌年の栽培準備

一季なり品種の場合、収穫が終了した親株は、掘り上げて片付けます 。

自分で子苗を採る場合は、よく育った親株を選んで残し、そこから子苗を採取します 。親株1株から10株以上の子苗が採れるため、全てを残す必要はありません 。不要な親株は片付けます 。

翌シーズンもいちごを育てたい場合は、9月になったら連作(同じ場所で同じ作物を続けて栽培すること)にならないよう別の場所を選び、土作りを行います 。

そして、10月に新しい苗を植え付けて栽培を始めます 。

四季なり品種の収穫後の株の扱いと翌年の栽培準備

四季なり品種の場合、気温が下がり始める9月から10月にかけて再びいちごの収穫ができるため、そのまま栽培を続けます 。この間に、必要であれば子苗を採取する作業も並行して行います 。

翌シーズンもいちごを育てたい場合は、連作にならないよう別の場所を選んで土作りを行い、10月に新しい子苗を植え付けて別途栽培を始めます 。

前年から栽培を続けていた親株は、秋の収穫が終わったら片付けます 。

毎年新しい苗を植え替えるメリット

いちごは多年草であり、何年も栽培を続けることは可能です 。しかし、アブラムシが媒介するウイルス病に繰り返し感染するリスクが高まり、収穫量が減少する可能性があります 。

そのため、毎年新しい苗を植え替えることが、安定した収穫量と病害のリスク軽減に繋がるためおすすめです 。

露地栽培でのいちごの旬はいつ?

青果店やスーパーでいちごが並び始めるのは11月から12月頃ですが、これはハウスを利用した促成栽培によるものです 。多くの人がイチゴの旬を冬だと思いがちですが、これは休眠が浅い品種を利用し、冬に実をつけさせる栽培技術によるものです 。

いちご本来の生理に合わせて自然条件下で行う露地栽培での旬は、一季なり品種の場合で5月から6月です 。

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